これまで「介護の小さなケア」シリーズでは、目やに、爪、口元、髪、手のひら、体位、排泄、食事、寝具など、身の回りにあるさまざまなケアについて書いてきました。
顔を拭くこと。爪を整えること。寝具のしわを直すこと。ナースコールを手の届く位置に戻すこと。一つひとつは特別なことではないように感じるかもしれません。けれど、自分で体を動かしたり、不快なことを言葉で伝えたりすることが難しい方にとっては、その一つひとつが気持ちよく過ごすための大切なケアになります。
今回は、これまでの記事を振り返りながら、私が元介護士として伝えたいことをまとめます。
小さな変化に気づくこと
暑い、寒い、痛い、気持ち悪いと感じていても、言葉でうまく伝えられるとは限りません。目元が汚れていないか、口の中が乾燥していないか、手のひらや指の間が蒸れていないか。表情や体の動き、におい、皮膚の状態から、いつもと違うことに気づく必要があります。大きな変化ではなくても、少し目を向けることで見つけられる不快感があります。
清潔にするだけでなく、本人がどう感じるかを考える
見た目がきれいになっていても、本人が寒かったり、痛かったり、不安を感じていたりすれば、気持ちよく過ごせているとは限りません。声をかけてから体に触れること、体位や衣類の乱れを整えること、時計が見えるかナースコールに手が届くかを確認すること。介助する側にとってはほんの少しのことでも、ご本人には自分でできないことがあります。すべてを介助するのではなく、できない部分だけを補うことも大切です。
完璧を目指さず、一人で抱え込まない
実際の介護の現場では、いつでも十分な時間をかけられるわけではありません。見えにくい場所まで毎日細かく確認することが難しい日もあります。ケアが行き届かないところがあったとしても、それだけで誰かを責められるものではないと思います。
自分ですぐに対応できないときは、周りの人に声をかけることも必要です。私も、別のケアで動けないときは同僚におむつ交換をお願いしたり、自分だけでは判断できない状態に気づいたときは看護師へ伝えたりしていました。みんなで行うケアが、本人にとってより良いケアにつながっていきます。
言葉や表情も、本人の尊厳を守るケアになる
においや汚れに気づいたとき、ご本人の前で「汚い」「くさい」と言わない配慮も必要です。「きれいにしましょうね」と声をかけながら、いつもと同じように対応する。ケアの方法だけでなく、言葉や表情も、ご本人の気持ちに影響します。
まとめ
介護の小さなケアは、特別な技術だけを指すものではありません。見落とされやすい場所に目を向けること、体位や環境を整えること、不快感に気づくこと。そして、声のかけ方やプライバシーに配慮することも含まれます。
気づけなかったことや、十分にできなかったことがあっても、それだけで自分や誰かを責める必要はありません。気づいたときに、できる範囲で対応する。自分では難しいときは、周りの人へ伝える。その小さな積み重ねが、本人の不快感を減らし、安心して過ごせる時間につながります。
このシリーズを通して、介護の中にある何気ないケアの大切さが、少しでも伝わればうれしいです。
第16回(最終回) 小さなケアは特別なことではない|元介護士として伝えたいこと

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