介護の現場では、食事、入浴、排泄、着替えなど、大きなケアに目が向きやすいと思います。もちろん、それらはとても大切なケアです。
でも、目やにを拭くこと。爪を整えること。髪を少し整えること。服のシワを直すこと。そうした身の回りの小さなケアも、介護される方にとっては大切なことだと感じています。
私自身、現場にいたときは、気づいていてもケアしてあげられないことがありました。休憩時間に記録を終わらせて時間を作ろうとしても、レクリエーションや委員会、勉強会などで、その時間が埋まってしまうこともありました。大切なのは患者さんや利用者さんのはずなのに、身の回りの小さなケアが後回しになってしまうことに、申し訳なさを感じることもありました。
この記事は、現場を責めるために書くものではありません。介護に関わり始めたご家族や、介護をする方にとって、身の回りの小さなケアについて考えるひとつの情報になればと思い、私の経験からまとめます。
小さなケアは、その人を大切に扱うことにつながる
自分で洗面をすること、歯を磨くこと、爪を切ること、ヒゲを剃ること、顔を拭くこと、髪をとかすこと。自分でできているうちは、日常の中で当たり前にしていることかもしれません。でも、誰かの介護が必要になったとき、そうしたセルフケアは自分ではできないことになります。
私が勤めていたところでは寝たきりの方が多く、ほとんどの方が身の回りの小さなケアにも介助が必要でした。爪が伸びていること、目やにが多いこと、口の中が十分にきれいにできていないこと。そうしたことに気づいていながらも、業務に追われて、勤務時間内にケアする時間が取れないことも多くありました。
身の回りの小さなケアは、見た目だけの問題ではありません。目やにがついたままなら、不快に感じているかもしれません。爪が伸びていれば、自分の皮膚を傷つけてしまうこともあります。口の中が十分にきれいにできていなければ、気持ち悪さや口の中のトラブルにつながることもあります。髪や服が乱れたままだと、落ち着かないと感じている方もいるかもしれません。本人が言葉で伝えられない場合でも、不快感がないとは限りません。
介護する側から見ると、小さなケアに感じることもあるかもしれません。でも、介護される方にとっては、気持ちよく過ごすための大切なケアだと思います。小さなことでも気づいてもらえること、不快なところを整えてもらえること。その積み重ねが、介護される方にとって、少しでも気持ちよく過ごせる時間につながるのではないかと思います。私が現場で感じたのは、小さなケアを大切にすることは、その人を大切に扱うことにもつながるということです。
介護する側も、いつも余裕があるわけではない
身の回りの小さなケアは大切です。でも、介護する側も、いつも余裕があるわけではありません。
私が勤めていたところでは、日勤帯だけでも多くの業務がありました。午前中には、入所者さんの半数の入浴介助と、残りの方の排泄介助を同時進行で行っていました。そのあと、昼食のための離床や移乗介助があります。食事介助をして、食後には帰室介助や移乗介助があります。休憩時間に入りながらも、記録を進めることもありました。
午後には、水分補給のための離床や移乗介助があります。その後、帰室介助や移乗介助を行い、記録をします。さらに排泄介助、夕食のための離床や移乗介助もあります。ここまでが、日勤帯の勤務の中で行っていた主な流れでした。
その間にも、ナースコール対応があります。転倒などの危険がある方のセンサー対応もあります。予定していた業務だけでなく、その場で必要になる対応も次々に入ってきます。そうした中で、目やにを拭くことや、爪の確認、髪を整えることなど、小さなケアまで十分に行き届かないことがありました。
これは、身の回りのケアが大切ではないという意味ではありません。むしろ、大切だとわかっているからこそ、できないことに申し訳なさを感じることがありました。業務時間外にケアをすることもありました。それでも、小さなケアは「できたらいいこと」ではなく、本人がその人らしく過ごすために大切なことだと感じています。介護する側も、気づいていないわけではなく、気づいていてもすぐに対応できない。現場には、そのような現実もあると感じています。
気になることは、責めるよりお願いとして伝えると届きやすい
もし、自分の家族の面会に行ったときに、髪や服が乱れていたり、爪が伸びていたり、目やにがついていたりしたら、どう感じるでしょうか。小さなことかもしれません。でも、その状態を見たご家族が気になるのは自然なことだと思います。「ちゃんとケアしてもらえているのかな」と不安になることもあると思います。
顔まわり、手元、髪、服の汚れや乱れ。そうした目に見える小さなところは、ご家族が気づきやすい部分だと思います。施設や病院によっては、面会時にご家族が身体に触れてはいけないなどの決まりがある場合もあり、気づいても、その場でケアできないこともあると思います。
そのようなときは、気になっていることをスタッフに伝えてもらえたらと思います。もちろん、できていない現場を責めることもできると思います。ただ、介護される方にとっても、ご家族にとっても、現場のスタッフにとっても、お互いが気持ちよく関わることは大切だと感じています。気になることがあったときは、できることなら責める形ではなく、お願いする形で伝えてみてもらいたいです。
たとえば、
「目やにが気になっていて、時間があるときに拭いてもらえたら助かります」
「爪が伸びているようなので、切れるタイミングでお願いできますか」
このように伝えてもらえると、現場のスタッフにも届きやすいのではないかと思います。ご家族が気づいたことは、現場を責めるためのものではなく、本人が少しでも気持ちよく過ごすための大切な情報になると思います。
まとめ|小さなケアも、本人が気持ちよく過ごすための大切なこと
目やにを拭くこと、爪を整えること、髪をとかすこと、服のシワを直すこと。そうした小さなケアは、見た目を整えるためだけのものではなく、その人を大切に扱うことにもつながると思っています。
現場には、時間や人手が足りない現実もあります。気づいていても、すぐにケアできないこともあります。だからこそ、現場を責めるためではなく、本人が気持ちよく、その人らしく過ごすために、ご家族とスタッフが一緒に気づいていけたらいいのではないかと思います。
この記事が、介護に関わり始めたご家族や、介護をする方にとって、身の回りの小さなケアを考えるきっかけになれば嬉しいです。
身の回りの小さなケアシリーズ
第1回:元介護士が感じた、身の回りの小さなケアで大切にしたいこと

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