在宅介護で腰を痛めないために|布団の上での体の動かし方

元介護士のリアル体験談
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前回の記事では、私自身が腰を痛めてから知った「ボディメカニクス」の考え方や、体の使い方の基本原則についてお話ししました。あわせて紹介したこちらの解説記事には、重心の保ち方や体の使い方の原則が詳しくまとめられています。

とはいえ、「原則は分かったけれど、実際に自分の体をどう動かせばいいのか、いまひとつイメージが湧かない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

女性がソファーで本を読みながら疑問に思っている

今回は、在宅でご家族を介護されている方に向けて、布団の上で行う介助を中心に、実際の体の動かし方を具体的にご紹介します。私自身の経験も交えながら、できるだけ実践しやすい形でお伝えできればと思います。

布団の上での体位変換 ― 基本の動き

寝たきりの方を布団で介護する場合、ベッドとは違い、介助者自身も膝をついて低い姿勢で動くことになります。この「しゃがんだ状態での動き」こそが、家庭介護で腰を痛めやすい一番の原因です。

ベッドに腰掛け腰を押さえている女性

体位を変えるときは、次の順番で行うと腰への負担をぐっと減らせます。

  1. 自分の膝を肩幅に開き、膝を立てて低い姿勢を作る。このとき、つま先もしっかり立てて床につけておくと、体が安定し、より少ない力で支えられます
  2. 本人の体の下に自分の腕全体を入れ、スライドさせるように自分の方へ引き寄せる(このとき、腰・肩・足と部位ごとに分けて行うのがポイント。一度に全身を動かそうとすると、それだけ大きな力が必要になり、腰への負担も増えます)

※腕を入れるときは、中腰にならないよう注意しましょう。自分の胸を本人の体に密着させ、背中と腰を反らせるようにしてからスライドさせると、中腰で行うよりも楽に行えます。中腰の姿勢は腰に大きな負担がかかるため、できるだけ避けるのがポイントです。

  1. 本人の膝を立てる(拘縮がある場合は無理に曲げない)
  2. 立てた膝を、自分とは反対側へゆっくり倒す
  3. 体交枕を体の下に挟む
  4. 最後に肩を抜いて、姿勢を整える

布団での介護は、どうしても中腰やしゃがんだ姿勢が多くなり、介護が長引くほど体への負担は計り知れないものになります。ご家庭での介護が始まる場合は、できるだけ早い段階でベッドを準備することをお勧めします。

介護が必要な高齢者がベッドに横になっている

介護保険を利用すれば、自治体を通じてレンタルできる場合もありますので、一度確認してみるとよいかもしれません。

布団からの起き上がり

布団から本人を起き上がらせるときも、体位変換と同じく低い姿勢が基本になります。

  1. 自分の膝を肩幅に開いて座る。このとき、つま先もしっかり立てて床につけておくと、体が安定し、より少ない力で支えられます
  2. 片手で本人の肩を、起こしたい方向へ軽く押して隙間を作る
  3. できた隙間に、肩の下から自分の腕全体を入れる
  4. 入れた手で本人の肩をしっかり持つ
  5. 自分の方へ引き寄せるようにしながら、円を描くように上体を起こしていく

このとき、もう片方の腕で本人の腕や腰を支えておくと、上体が安定し、より安全に起こすことができます。

布団からの移乗(車椅子・ポータブルトイレなど)

高齢者が乗った車椅子を押して歩いている

床(布団)からの移乗は、体位変換や起き上がり以上に腰への負担が大きい動作です。基本的に一人で行うのは避け、二人介助で行うことを強くおすすめします。一人での移乗は腰痛に直結しやすく、無理は禁物です。

二人で行う場合の基本的な流れは次の通りです。

  1. 起き上がりの要領で、本人の上体を起こす
  2. 一人が本人の脇から腕を通し、本人の腕を持つ(上半身担当)
  3. もう一人が両腕で本人の膝を抱えるように持つ(下半身担当)
  4. 二人で息を合わせ、同時に持ち上げて車椅子(またはポータブルトイレ)に座らせる

ポイント

  • 車椅子はあらかじめ布団のすぐ近くに置いておくと、持ち上げてから移動する距離が短くなり、負担を減らせます
  • 本人の腕や膝を直接持つことになるため、長袖・長ズボンを着用して皮膚を保護しましょう。暑い時期で薄着になる場合は、移乗のときだけでもタオルなどを巻いて肌を保護すると安心です

布団の上での着替え

着替えも、体を支える人と作業する人で役割を分けられる二人介助と、体位変換の要領で行う一人介助とでは、動きが大きく異なります。

要介護の高齢者がベッドで横になりベッド柵に手をかけている 介護者がその手を握っている

二人で行う場合

  1. 起き上がりの要領で、本人の上体を起こす
  2. 一人が体を左右から支え、もう一人が着替えを行う(途中で役割を交代してもよい)
  3. 着替えが終わったら、体を自分の方へ引き寄せながら、起こしたときとは逆方向に円を描くように、ゆっくりと体を寝かせる

一人で行う場合

一人のときは、体位変換の要領を使って着替えを進めます。

  1. 片方の袖を脱がせる
  2. 体位変換の要領で、体を横に向かせる
  3. 脱いだ服をまとめ、本人の体の下に押し込む
  4. 脱いだ側の腕に新しい服の袖を通し、脱いだ服と一緒に体の下へ押し込む
  5. 体の向きを仰向けに戻す(このとき、体の下にまとめた服が入っている状態になる)
  6. 自分も反対側へ移動し、体を先ほどとは反対の向きにする
  7. 体の下から服を取り出し、いま着ている服の袖を抜いて、新しい服の袖を通す
  8. 衣類のシワを伸ばして整える

まとめ

布団での介護は、中腰やしゃがんだ姿勢が続きやすく、体への負担が大きくなりがちです。今回ご紹介した動きを取り入れていただくだけでも、負担を減らす助けになると思います。

そして何より大切なのは、一人で抱え込まないことです。特に移乗は、無理をすると腰痛に直結しやすい動作です。可能な範囲でご家族や周囲の手を借りたり、介護保険を使ってベッドや福祉用具を取り入れたりすることも、ぜひ検討してみてください。

次回は、実際にこうした介助をより楽にしてくれる用品について、私自身が試した経験も交えながらご紹介する予定です。

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