面会のとき、ご家族は手元を見る機会が多いと思います。手を握ったり、布団から出ている手が見えたりしたときに、爪が伸びていることに気づくこともあるのではないでしょうか。
爪のケアは、見た目だけの問題ではありません。爪が伸びていると、本人の皮膚を傷つけてしまうことがあります。
今回は、私が元介護士として感じた、寝たきりの方の爪・手元のケアで大切なことについてまとめます。
爪が伸びていると、皮膚を傷つけることがある
寝たきりの方や認知症がある方などは、無意識に顔や身体をかくことがあります。そのときに爪が伸びていると、顔や腕、身体に傷ができてしまうことがあります。
高齢の方や寝たきりの方の中には、皮膚が弱くなっている方もいます。その場合、少しの傷が赤みや皮膚めくれにつながることもあります。
爪を整えることは、見た目をきれいにするためだけでなく、本人の皮膚を守るためにも大切なケアだと感じています。
爪切りは、簡単そうに見えて気をつかうケア
爪が伸びてくると、次第に爪が厚くなったり、変形したり、硬くなったりすることがあります。爪だけを切っているつもりでも、皮膚まで切ってしまう可能性があり、無理に切ると出血や傷につながることもあります。
私自身も、介護福祉士の資格を取るための研修中、初めて爪切りケアをしたときに、寝たきりの方の皮膚を切ってしまったことがありました。20年以上たった今でも、そのときの申し訳なさは覚えています。同時に、爪切りは慎重に慎重を重ねないといけないケアなのだと、自分の中に刻まれた出来事でもありました。それ以降は、角度を変えて切るときも、皮膚を切らないか何度も確認してから切るようになりました。
特に、巻き爪や厚くなった爪、変形している爪、痛みがある爪の場合は、無理に切らず、看護師さんや専門職に相談した方が安心です。
実際に勤めていた現場では、爪切り用のニッパーや電動の爪ヤスリを使うこともありました。ニッパーは厚くなった爪を切るのに使っていましたが、私自身は怖くて使ったことがありませんでした。電動の爪ヤスリは、同じく厚くなった爪に使ったり、爪切りを嫌がる方に使ったりしていました。
爪切りは、本人の皮膚や痛みに気をつけながら、慎重に行う必要があるケアだと感じています。
手元を整えることは、その人らしさを守ることにもつながる
手元がきれいに整っていると、ご家族も安心することがあるのではないでしょうか。
ネイルや手入れを大切にしていた方、仕事柄いつも爪を短くしていた方など、爪や手元への向き合い方は人それぞれです。
寝たきりになったり、自分で爪を切ることが難しくなったりしても、その人が大切にしていた身だしなみまでなくなるわけではありません。手元を整えることは、その人を大切に扱うことにもつながると思っています。
忙しい現場では、爪切りが後回しになることもある
爪切りは、皮膚めくれや傷を作らないように、ひとりひとりの爪の状態を確認しながら慎重に行うため、時間もかかります。
食事介助、排泄介助、入浴介助、移乗介助、ナースコール対応など、現場では次々にやることがあり、爪切りの時間をしっかり確保することが難しい場面もありました。
大切だとわかっているからこそ、すぐに対応できないことに申し訳なさを感じることもありました。
家族が気づいたときは、お願いの形で伝えてみる
面会のときに爪が伸びていることや手元の汚れに気づいた場合は、責める形ではなく、お願いの形でスタッフの方へ伝えてみるのがおすすめです。
「手の爪が気になったので、確認してもらえたら助かります」
このように伝えると、届きやすいと思います。
また、ご家族が爪を切ってあげたいと思うこともあるかもしれませんが、爪の状態には個人差があり、皮膚が近くまでくっついていることもあります。自己判断で切る前に、まずはスタッフの方へ声をかけてから行うと、傷や出血を防ぎやすくなります。
まとめ|爪・手元のケアは、本人を傷から守るためにも大切
爪を整えることは、皮膚を守ること、清潔を保つこと、その人らしさを保つことにもつながる大切なケアです。
爪の状態によっては、切る側も慎重に対応する必要があります。気になるときはスタッフの方に相談してみてください。
ご家族が気づいたことは、現場を責めるためではなく、本人が少しでも気持ちよく、安全に過ごすための大切な情報になると思います。
「身の回りの小さなケア」シリーズ
第3回 寝たきりの方の爪・手元ケア|元介護士が伝える大切なこと

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