寝たきりの方の食事まわりケア|元介護士が伝える大切なこと

身の回りの小さなケア

寝たきりの方の中にも、口から食事をされる方はいらっしゃいます。食事介助と聞くと、「食べてもらうこと」が大切だと思われるかもしれません。もちろん、栄養や水分を摂ることは大切です。

でも、私が現場で感じていたのは、食べてもらうことだけが食事介助ではないということです。本人が食べたいのか、むせていないか、呼吸は苦しくなっていないか、もう食べたくないというサインは出ていないか。そうした小さな変化を見ながら関わることも、食事まわりの大切なケアだと感じていました。

今回は、私が元介護士として感じた、寝たきりの方の食事まわりの小さなケアで大切なことについてまとめます。

食べたくないサインを、見逃さないようにしていた

食事介助をしていると、「全部食べてもらわないといけない」と感じる場面があります。栄養や水分を摂ってほしい、体力を落としたくない。そう考えると、少しでも多く食べてもらいたいと思うのは自然なことだと思います。

私が食事介助をするときは、口の開きが小さくなってきたとき、スタッフの手を払うような動作があるとき、顔を背けるとき、口を開けようとしないとき。そのような様子があると、「食べたくないですか?」と確認していました。うなずいたり、何かしら反応がある方もいましたし、はっきりした反応がなくても、その後に介助しても口を開けない場合は、食べたくない意思の表れかもしれないと受け取っていました。言葉で伝えられなくても、身体の動きや口の開き方、表情に気持ちが出ていることがあると感じています。

無理に口へ運び続けることはしたくなかった

本人が嫌がっているのに、口に食事を入れ続けることは、私の中ではしてはいけないことだと感じていました。食べてもらいたい気持ち、栄養を摂ってほしい気持ちはあります。でも、本人が嫌がっている様子があるのに続けることは、本人の意思を無視することにつながるのではないかと思っていました。

「もういらない」「今は食べたくない」「しんどい」。言葉で言えなくても、そのサインが出ていることがあります。そのサインに気づいたら、一度止めることも大切だと感じていました。食事介助は、食べさせるためだけの時間ではなく、本人の様子を見て意思をくみ取る時間でもあると思います。

今食べられなくても、あとで食べられることもある

食事の時間に食べられないと、「今食べてもらわないと」と思うこともあるかもしれません。でも、今食べられないからといって、その日ずっと食べられないとは限りません。少し時間をあけたら食べられることもありますし、食事ではなくても水分や糖分をこまめに提供することで補えることもあります。

私が勤めていたところでは、食事量が少なくなってきた方については、看護師さんや栄養士さんと相談し、医師に確認や許可をもらいながら、提供量を調整することもありました。高齢の方は、食べられる量が少なくなることがあります。だからこそ、「全部食べること」だけにこだわるのではなく、その人の状態に合った食べ方や量を考えることも大切だと感じていました。

食事中は、呼吸状態をよく見ていた

食事介助で怖いと感じていたのは、窒息やむせ込みです。飲み込めているか、むせていないか、呼吸が変わっていないか、顔色が変わっていないか。そうしたことを見ながら介助していました。

私が勤めていたところでは、別の部署で窒息が起きることもありました。自力で食べられる方が窒息を起こしたこともあり、いつ自分がその場面に遭遇してもおかしくないと思っていました。現場に入ってから、食事を食べてもらうことはこんなに怖いことでもあるのだと感じました。食事介助は口に運ぶだけのケアではなく、安全に食べられているかを見守ることも、とても大切なケアだと思っています。

食事の様子は、スタッフに聞いてみると分かることもあります

ご家族からすると、食事量が少ないと心配になると思います。

「ちゃんと食べられていますか」

「食事中に嫌がることはありますか」

このように聞いてみても良いと思います。食事の様子は、面会のタイミングだけではわからないこともあります。スタッフに聞くことで、普段の食事量やむせ込み、食べるときの様子を知ることができると思います。気になることがあれば、責める形ではなく、本人の状態を知るために聞いてみると良いのではないかと感じています。

まとめ|食事まわりのケアは、本人の意思と安全を見ることが大切

食事介助は、全部食べてもらうことだけが目的ではないと思っています。本人が食べたくないサインを出しているときに、無理に続けることは、本人にとってつらい時間になることがあります。

現場では、忙しさの中で一人ひとりにゆっくり時間をかけることが難しいこともあります。それでも、少し時間をあけたら食べられる方、少しずつなら食べられる方、水分や糖分をこまめに摂る方が合っている方など、その人に合わせて、食事の時間をしっかり確保できたら、と現場を離れた今でも思います。食事まわりの小さなケアは、本人の意思を大切にすること、安全に食べてもらうこと、その人らしく過ごしてもらうことにつながると感じています。


第11回 寝たきりの方の食事まわりケア|元介護士が伝える大切なこと

コメント

タイトルとURLをコピーしました