「最近、食べれてないんですか?」と聞かれる瞬間

面会に来られたご家族から、こう聞かれることがよくありました。
「最近、食べれてないんですか?」
心配そうな、少し不安げな声です。私が勤めていたところでは、こう聞かれたとき、事実を隠すことも、必要以上に不安にさせることも、どちらもしないように気をつけていました。
たとえば、こんな答え方をしていました。
「夕食は食べられていますよ」
「最近少しずつ増えてきている感じです」
「今日は機嫌が良くなかったのかもしれません」
嘘は一切ついていません。でも、家族が聞いて一番苦しくなる伝え方も選んでいません。
不安だけが残ってしまわないような工夫
介護の現場で日々の食事量を見ていると、「食べられない日」は必ずあります。体調、気分、その日の献立、眠気——理由はさまざまです。でも家族にとっては、「食べられていない」という一言だけが、そのまま「弱ってきている」「もしかしたら、もう長くないのかもしれない」という不安に直結してしまうことがあります。

だからこそ、私たち介護士は、事実の”切り取り方”にとても気を使っていました。
「今日は残されました」だけを伝えるのではなく、「ここ数日で見ると、少しずつ食べられる量が増えてきています」というふうに、流れの中で伝える。
「食べなかった」という結果だけでなく、「機嫌が良くなかったのかもしれません」というふうに、理由に想像の余地を残す。
私が勤めていたところでは、こんなふうに伝え方を工夫していました。
食事の場面での具体的なケアについては、寝たきりの方の食事まわりケア|元介護士が伝える大切なことでも詳しく紹介しています。
事実をごまかしているわけではない
これは、事実をごまかしているのではありません。むしろ逆で、一日だけを切り取って伝えることのほうが、実態から離れてしまうことがあるんです。食事量は日によって波があるのが普通で、その波全体を見て伝えることのほうが、ご家族にとっても正確な情報になります。

もちろん、本当に食欲が落ちてきていて、医学的な判断が必要な場合は、そこは看護師や医師からきちんと説明があります。私たち介護士が担っていたのは、その手前にある「日々の暮らしぶりを、家族の心が保てる形で届ける」という役割でした。
ご家族に伝えたいこと
もし今、離れて暮らすご家族の食事量が気になっている方がいたら。「食べていない」という言葉だけで、必要以上に自分を追い詰めないでほしいと思います。日によって波があるのは自然なことで、施設や病院のスタッフは、その波も含めて見てくれているはずです。

これから入所・入院の準備をされる方は、元介護士が伝える、入院・施設入所のときに持っていく服で気をつけたいこともあわせてご覧ください。
気になることがあれば、遠慮せずスタッフに聞いてみてください。「今日はどうでしたか?」ではなく、「最近の様子はどうですか?」と聞くと、より流れの見える答えが返ってくるかもしれません。
ご家族同士で状況を共有する際のコツは、家族で介護を分担するときに大切なこと|うちの引き継ぎのコツにもまとめています。

コメント